難しいけど深い。はかる道具で耳にする「校正」とは?
ここに一つの「はかる道具」があるとします。
その「はかる道具」は、「正しく長さを測れているのか」?
そして、「何を根拠に」、その「はかる道具」は「正しい長さを示していると言えるのか」・・・!?
こんな話をすると、少し哲学的ですね。
今回は、(はかる道具における)「校正」について触れてみましょう。
1. (はかる道具における)「校正」とは
「校正」とは、「標準器」を用いて「測定器が表示する値」と「真の値」との関係を求めることを言います。
例として、一つの測定器があるとします。
「それが正確か、不正確か」を確認する為には、「基準」となる計量器が必要です。
この「基準となる計量器」のことを、「標準器」と言います。
「標準器」と「測定器」を「比較」することで、
「測定器」が「どれくらい正確に測れているのか」(どれくらいの差があるのか)を確認します。
これが、(はかる道具における)「校正」です。
「校正証明書」は、測定器を校正して、校正結果を示し、証明した書類になります。
2. 「標準器」の値は「正確」といえるのか?
そもそも、校正に使用する「標準器」の表示する値は、「基準として捉えて良いのか」を考えてみましょう。
実は、「標準器」には、その正確性を保証する仕組みがあるのです。
それが、「トレーサビリティ」と呼ばれる体系に基づいた仕組みです。
図を見てみましょう。
一番上は、「特定標準器」と呼ばれるもので、値を付与する為の国家が認めた標準であり、これが「正確さ」の大本になります。
対して、下から2番目の「直尺校正用直尺」が、校正に使用する「実用標準」となります。
(一番下は、ユーザー様が所有する測定器です。)
一番上の「特定標準器」の「正確さ」は、「校正」を通して、「特定二次標準器」、「参照標準」、そして「実用標準」である「直尺校正用直尺」、といった流れで、「特定標準器」からの校正が連鎖されていきます。
この仕組みが「トレーサビリティ」であり、校正証明書に記載される値が、正しい長さを示す根拠になります。
3. 「標準器」が示す値は、「真の値」?
「真の値」とはその言葉通り、「真実」の「値」、ということなのですが、「真の値」とは、「標準器から読み取った値」とは異なります。
それは、通常であれば真の値を知ることは不可能である為です。
4. 「不確かさ」とは
仮に、「基準に沿った場所・環境」で、「トレーサビリティが取れた標準器」で「校正を行う」とします。
しかし、
微妙な温度の違いによる標準器や測定器の膨張・収縮による「ばらつき」
標準器や測定器自体の誤差、技能の誤差による「ばらつき」
などによって、計測には「ばらつき」が必ず存在します。
「不確かさ」とは、様々な「ばらつき」によって、
「絶対的な真の値は知ることができないことを前提に、ばらつきなどを統計的に評価し、真の値が含まれる範囲を推定した値」になります。
※校正証明書にも「不確かさ」は記載されるものとなっています。
今回は「校正」についてご紹介しました。
「正確さとは何か」について考えさせられる、ちょっと難しい内容でしたね。
「はかる道具」、そして「基準」。
私たちの生活空間は、「基準」に沿って、建てられたり、作られたりしています。
快適さを作り、支える為に大切な「正確さ」。
これからも「はかるもの」を通して、色々な事をご紹介していきたいと思います。